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東京高等裁判所 昭和35年(う)2900号 判決

被告人 永山清治 外二名

〔抄 録〕

次に原判示第一及び第二の事実につき按ずるに、証人徳善義光同上原銀次郎の原審第四回公判調書中の各供述記載を綜合すると、東京都水道局においては、昭和二七年一〇月一日地方公営企業法が施行されて後は、東京都水道局財務規程により、物品の売買契約をするについては、一般競争入札によることを原則とされたのであるが、現実には一般競争入札は殆ど行われず、同規程第二〇九条第一項第二号により指名競争入札が寧ろ原則となり、特許品とか、極く少額の契約等に限り同規程第二一一条により随意契約が行われる実情であつた。各所論によると本件で問題となつている砲金製水道用器具類については前沢パルプ工業株式会社が、その製品の優秀さにおいて、生産能力の点において、且つ、また納期の確実さにおいて本邦唯一の業者であり、他には水道局の要求を満たすに足りる業者が無かつたものであるから、前記財務規程によつて当然前沢パルプと随意契約を締結することができたものである。それにも拘わらず、指名競争入札の方法によつたのは、単にその形式を借りたに過ぎず、局長、部長等の上司も右の事情を知悉していたから、被告人等には入札妨害の犯意を欠いたものであると主張する。よつて按ずるに、原審が取調べた証拠によると、前沢パルプ工業株式会社が砲金製水道用器具類の製造業者として、他の業者に比し、その製造能力の点等において勝れていたことはこれを窺うことができるのであるが、さらばといつて本件水道用器具購入契約の如きは随意契約によることを認められた前記財務規定第二一一条各号のいずれにも該当しないものである。即ち、被告人民部の検察官に対する昭和三〇年一一月一六日附供述調書(但し、同被告人に対する関係で)、若島信太郎の検察官に対する供述調書、証人樋口嘉惣次の原審第六回公判調書中の供述記載、証人松崎作太郎の原審第九回公判調書中の供述記載、証人山口兼治の当審第四回公判調書中の供述記載、当審証人谷口進の証言及び被告人民部岩次郎の当公廷の供述によると、本件犯行時にあつては、前沢パルプの外、少くとも墨田鋳工株式会社、武井工場、山根合金株式会社等の砲金製品製造業者があつて、それらも指名業者として砲金製品を水道局に納入していたことが窺われ、指名競争入札を施行するに必要な最少限度三社の業者が無かつたわけではないから、所論の如く指名競争入札によることを得ない場合であつたとは到底認め難い。

而して、原判決挙示の証拠、就中、被告人永山の検察官に対する昭和三〇年一二月一四日附供述調書、同三〇年一〇月二一日附供述調書(但し、被告人永山の関係について)、被告人民部の検察官に対する同三〇年一二月二日附、同年一二月二〇日附及び同年一一月二八日附(但し、被告人民部に対する関係)各供述調書、被告人山岸の検察官に対する同年一二月六日附供述調書、田原吉郎の検察官に対する同年一二月一日附、同年一二月一二日附各供述調書、証人岡山宏の原審第五回公判調書中の供述記載、同人の検察官に対する同年一二月一二日附供述調書によると、被告人永山は昭和二七年一一月一日、経理部用度課契約班員として砲金製品の契約事務を担当することゝなり、始め数回は指名競争入札の手続により業者に対し指名通知を発して適式に入札をさせていたが、昭和二八年の始め前沢パルプの田原吉郎から「今後は入札の事は自分に言つてくれゝば入札書を纒めて持つてくる。このことは一応上の人達にも話してあり相入札者の業者は皆前沢パルプの下請業者だから心配ない」と告げられてからは、田原吉郎が正規の指名競争入札の方法によらず形式上は指名競争入札の手続きを経ながら、実際は前沢パルプの単独契約によつてその製品を納入するものであることを知りながら、之に応じ、その後田原吉郎と共謀の上、前沢パルプ以外の業者に対しては入札の通知を出さず、田原吉郎が形式的に取纒め持参した入札書を添付して、恰かも適式に入札が行われた結果、前沢パルプが落札した如く偽装して所要書類を作成し権限ある上司をして之に基き前沢パルプとの間に売買契約を締結させたこと、被告人山岸は上司である経理部長上原銀次郎から暗に前沢パルプから買つてやるよう指示され、昭和二九年九月頃から永山に代つて砲金製品の契約事務を担当することゝなつた被告人民部に対し、その都度これは前沢パルプから買つてやれと指示して購買請求伝票を被告人民部に交付していたこと被告人民部は同山岸から右の如き指示を受けると、同人の意図を察知し田原吉郎とも共謀し、正規の指名競争入札の手続きを経ることなく、田原が持参した偽装の入札書に基いて書類を作成し、真正に入札が行われた結果、前沢パルプが落札した如く装つて契約締結に関する上司の決裁を経ていたものであることを肯認することができる。右認定に反する各被告人等の原審並に当審における供述はたやすく措信し難い。

ところで、刑法第九六条ノ三第一項に規定する入札妨害罪が成立するためには、公の入札の存在することが必要であり、公の入札の存在するものと認め得るには国または公共団体の正当な権限を有する機関によつて適法に競争入札に附すべき旨の決定のなされたことを必要とし、且つそれを以て足るものと解されるから、若し、右機関において真実入札手続きをする意思がなく、実際は特定の業者と随意契約するものであるに拘わらず入札手続きを偽装する目的で入札に附する旨の決定をした場合においては、入札妨害の対象となるべき公の入札そのものが存在しないことゝなり、これに対し入札妨害はあり得ず、同罪の成立する余地はない。そこで本件につきこれを検するに、証人上原銀次郎の当審第六回公判期日における「自分は昭和二七年一〇月一日水道局の機構改革当初にあつては、経理部の人員不足と業務不馴れから、指名競争入札によるべき場合にも従前の例により随意契約によつて購入したり、指名競争入札の形式によりながら、業者が馴れ合つて入札書を持つてきたことのあるのを書類を見て判かつた。前沢パルプの社長前沢慶治からも、品物があるから面倒を見てくれと頼まれたことがあり、ずつと前からのしきたりで、指名競争入札による場合、形だけ整えて随意契約で製品を納入することも時たま行われた」との趣旨の供述、その他田原吉郎の検察官に対する昭和三〇年一二月一二日附述供調書、証人田原吉郎の当審第三回、第四回公判調書中の供述記載、被告人山岸の検察官に対する昭和三〇年一二月六日附供述調書から推すと、本件当時、水道局経理部長の職にあつた上原銀次郎は砲金製品につき担当係官が実際は前沢パルプから随意契約により購入するに拘わらず、形式上指名競争入札の手続きを仮装するものであることを察知しながら、入札伺に対し決裁していたことを窺うことができる。果して然からば、同人のなした入札に附すべき旨の決裁の真意は随意契約をするにあつたものであり、正当な入札の決裁ということができないから、その後行なわれた手続きに対しては入札妨害はあり得ない。そこでたとえ、被告人等が前記のとおり競争入札を仮装して手続きを進行し、各権限ある機関をして契約を締結するに至らしめても、入札妨害罪を構成するものではない。然しながら水道局長徳善義光及び同局長代理加藤清のなした指名競争入札伺に対する決裁については、同人等において右の如き偽装の入札であることを知りながらその決裁をしたものであることはこれを確認することができない。右の次第であるから原判示事実中徳善義光及び加藤清が指名入礼伺に対し決裁をした部分(原判決添付第二表(一)昭和二七年度中番号2、3、4、5、7、8、9、(二)昭和二八年度中番号2、4、5、6、7、9、12、13、14、7、9、20、21、22、23、24、27、28、30、31、33、34、35、(三)昭和二九年度中番号1、2、4原判決第二事実本文の事実及び原判決添付第四表(一)昭和二九年度中番号1、2、)についてはその証明充分であつて、原判決には事実を誤認した違法は存しないけれども、その余の部分は経理部長上原銀次郎が指名競争入札に附すべき旨の決裁をなしたものであつて、同人のなした決裁と認め難いこと前説示のとおりであり結局この部分については公の入札は存在しないこととなり、従つて入札妨害罪も成立しないものといわねばならない。

それ故原判決は右部分については事実を誤認した違法があり、右は固より判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免かれない。

次に弁護人小原栄の論旨第一は被告人山岸の検察官に対する自供調書は取調べ官の強要に基くものであつて任意性を欠き、被告人民部及び前沢慶治の各検察官に対する供述調書は信憑性が無いと主張するけれども、所論に基き本件記録を精査すると被告人山岸は入札妨害罪の容疑で昭和三〇年一二月五日逮捕され、翌六日には検察官の取調べに対し入札妨害の事実及び収賄の事実につきいずれもこれを自供し、同年一二月一二日釈放されたものであるが、その後同月二三日の検察官からの取調べに当つても再び前回と同旨の供述をしているのであつて、その他右各供述調書の形式、内容を検討し、他の証拠と対照してみても右自供調書が所論の如き取調べ官の強要に基き作成された任意性を欠くものであることは認め難く、また被告人民部及び前沢の各検察官調書についても、それを他の証拠と対照してみて信憑性につき疑問を差し挾むべき事跡は認められないから、右主張は採用することができない。

弁護人窪谷朝之の論旨第一点中理由くいちがいの主張について、所論に基き原判決を仔細に考察すると、原判決は被告人永山は原審相被告人田原吉郎と東京都水道局が購入するパルプ類等につき前沢パルプが同局から適正公正な指名競争入札によつて落札した如く仮装してこれを納入せしめ、以て偽計を用いて公入札の公正を害すべきことを企て、田原吉郎は相入札者の見積り書をその名義人等に無断で偽造し、これを偽造の情を知らない被告人永山に真正に成立したものゝ如く装つて交付行使し、被告人永山は右相入札見積り書が偽造であることは知らなくても少くとも田原吉郎が各見積り書に前沢パルプが必ず落札する如く適当に入札価額を記載し、恰かも公正な競争入札が行われた如く偽装するものであることを知悉しながら、前沢パルプが適法に落札した如く装つて所要書類を作成し、上司に提出してその旨誤信させ、前沢パルプとの間に物品供給契約を締結するに至らしめたことを判示したものであるから、右の場合、被告人永山と田原吉郎に対しいずれも共謀による入札妨害罪が成立し更に田原吉郎に対しては、右の外私文書偽造同行使罪が成立するけれども、被告人永山については私文書偽造同行使の点については犯意を欠くから同罪の成立しないのは当然である。右の次第であるから原判決が田原吉郎については私文書偽造同行使罪を認め、被告人永山につきこれを認めなかつたとしても、理由にくいちがいの違法ありということはできない。論旨は理由がない。

弁護人窪谷朝之の論旨二点、同小原栄の論旨第二、同吉江知養の論旨第二、法令の適用の誤りの主張について、

各所論中、本件砲金製品については前沢パルプの外には水道局の要求に応じ得る丈けの能力ある製造業者がなく、従つて水道局としては、同財務規程第二一一条により前沢パルプと随意契約によることの許される場合であつたとの主張については、その理由のないこと既に説明したとおりであるからこゝに再説しない。次に所論は、本件の指名競争入札に附すべき旨の決裁は形式的なものに過ぎず、且つ右入札のことは業者に対し通知する等外部に表示されていないから公の入札そのものが存在しない。また被告人等の所為は正当行為であると主張する。然しながら前記のとおり徳善局長並びに同代理加藤清に関する限りにおいては、同人等は正規に競争入札が行われるものと信じて入札に附すべき旨の決裁をしたものであるから、これを以て形式に過ぎないものということはできない。また、たとえそれが外部に対し表示されなかつたとしても、既に入札の手続きは入札伺に対する決裁によつて開始したものであり、右入札に対し、その公正を害すべき行為をなし得る状態が形成されたものと解するのが相当である。更に、本罪の主体たるべき者は必ずしも所論の如くその他の第三者に限るものではなく、本件の場合の如く入札手続きを担当すべき水道局の職員であつてもその主体たるに妨げないことは本条制定の趣旨に鑑み疑を容れない。してみると入札妨害者が水道局の職員であつたからといつて、内部的行政上の問題であるとして不問に附することのできないのは当然であり、また被告人等が上司の指示に従つたものであるとしても、それがため正当行為として違法性を阻却すべき限りでなく、なお被告人等の所為が正当業務行為とも認められないから論旨はいずれもその理由がない。

然しながら、原判決には前記のとおり一部事実の誤認があり、右誤認は判決に影響を及ぼすものであること既述したとおりである。而して被告人等はいずれも、他の有罪部分と併合罪の関係にありとして審理判決を受けたものであるから、爾余の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条第一項第四〇〇条但書に則り原判決中被告人三名に関する部分を全部破棄した上、当裁判所において自から次のとおり判決する。

(罪となるべき事実)

被告人永山清治は、東京都主事補として昭和二七年一一月一日より昭和二九年九月二四日までの間、東京都水道局経理部用度課契約班に勤務し、同局用物品購買品等に関する契約事務に従事した者、被告人山岸友一は東京都主事として、同二七年一一月一日より同三〇年六月五日までの間、同局経理部用度課長として勤務し、右被告人永山清治の職務を総括監督する等の職務に従事した者、被告人民部岩次郎は東京都主事補として、同二七年一一月より同三〇年六月三〇日までの間、同局経理部用度課に勤務し、契約班長として右被告永山と同様の職務に従事した者であるが、

第一、被告人永山清治は、水道用パルプ等の製造販売を業とする前沢パルプ工業株式会社の取締役としてその営業を担当する田原吉郎と共謀の上、同水道局において購入すべきパルプ類等につき、前沢パルプが同局から適式公正な指名競争入札により落札を得たものゝ如く仮装してこれを納入せしめ、以て偽計を用いて公入札の公正を害すべきことを企て、昭和二八年一月頃、同局において水道局長徳善義光より砲金製乙止水栓二点を指名競争入札の方法により購入することの決裁を受けるや、先づ田原吉郎はその頃、前沢パルプ名義で金額四、二八九、〇〇〇円の見積書を作成すると共に、擅に、株式会社東洋合金製作所取締役社長志村千代治、株式会社山田パルプ製作所取締役社長山田兼吉、合資会社高原製作所代表社員高原伸吉、株式会社栗田製作所取締役社長栗田松五郎、及び合資会社昭和製作所代表者猪浦茂市各作成名義の、それぞれ前記物件を四、三四〇、〇〇〇円、四、三二六、〇〇〇円、四、三五〇、〇〇〇円、四、三九〇、〇〇〇円及び四、三七二、〇〇〇円で見積もる旨記載した入札見積書を作成した上、偽造の情を知らない被告人永山に交付し、次いで被告人永山において、右共謀に基き、指名競争入札の正規適式な手続きを施行しないのに拘わらず、恰も右各見積書の名義人を入札者に指名し、これを参加せしめて昭和二八年一月二四日右物件購買の指名競争入札を施行した結果、前沢パルプが右入札価格で落札を得たものゝ如く仮装した所要書類を作成した上同局において右各見積書を添え、その情を秘してこれを上司たる東京都水道局長徳善義光に回付し、よつて同人をして適式公正な指名競争入札により入札を行い、前沢パルプが右価格を以て落札を得たものと誤信させ、同日同局長をして右前沢パルプとの間に砲金製乙止水栓二点の右価格による物品供給契約(水契一〇四二号)を締結するに至らしめ、以て偽計を用いて右物件の購買に関し、公入札の公正を害すべき行為を為した外、別紙第一表記載のとおり、昭和二八年一月二四日頃から同二九年九月一七日頃までの間に亘り、前同様、同水道局において、水道局長徳善義光、或は同代理加藤清から各品目欄記載の物件を指名競争入札の方法により購入する旨の決裁を受けた上、田原吉郎から同表記載の如き前沢パルプの入札見積書、及び同人が擅に作成した各相見積名義人の入札見積書を受取り、次いで被告永山において、前記共謀に基き、前同様指名競争入札の正規適式の手続を施行しないのに拘わらず、恰も同表記載の各入札にはこれらの見積書の各名義人を指名参加せしめて競争入札を施行した結果、前沢パルプが同表記載の入札金額により落札を得たものの如く仮装した所要書類を作成の上、同局においてこれに右各見積書を添え、その情を秘して同局長代理加藤清に回付し、同人等をして前沢パルプとの間に同表記載の物件につき前沢パルプの入札金額による物品供給契約を締結するに至らしめ(契約額合計一〇一、〇五七、四五〇円)、以て、その都度偽計を用いて公入札の公正を害すべき行為をなし、

第二、被告人山岸友一、同民部岩次郎は、田原吉郎と共謀の上、右水道局において購入すべきパルプ類等につき、前沢パルプが同局から適式公正な指名競争入札により落札を得たものゝように仮装して、同会社をしてこれを納入せしめ、以て偽計を用いて公入札の公正を害すべきことを企て、昭和二九年一二月二五日、同局において、徳善水道局長より、分水栓都型一三三、〇〇〇個を指名競争入札の方法により購入することの決裁を受けるや、先づ田原吉郎はその頃前沢パルプ名義で金額七七四、〇〇〇円の見積書を作成すると共に、擅に、合資会社高原製作所代表社員高原伸吉名義、日本工機株式会社取締役社長栗田正義名義、及び株式会社東洋合金製作所取締役社長志村千代治名義の、それぞれ前記物件を金七八八、二〇〇円、金七九四、〇〇〇円及び八一〇、〇〇〇円で見積り入れする旨の見積書を作成し、これを右前沢パルプ名義の見積書と共に被告人民部に交付し、次いで被告人民部において、右共謀に基き、指名競争入札の正規適式な手続きを施行しないのに拘わらず、恰も右各見積書の名義人を入札者に指名し、これを参加させて昭和二九年一二月二五日右物件購買の指名競争入札を施行した結果、前沢パルプが右入札価格で落札を得たものゝ如く仮装した所要書類を作成した上、同局において右各見積書を添え、被告人山岸を経て局長徳善義光に回付し、よつて同局長をして適式公正な指名競争入札により入札を行い、前沢パルプが右価格を以て落札を得たものと誤信させ、昭和二〇年一月五日前沢パルプとの間に、分水栓都型一三粍三、〇〇〇個の右価格による物品供給価格による物品供給契約(貯第二、五六九号)を締結するに至らしめ、以て偽計を用いて右物件の購買に対し、公入札の公正を害すべき行為をなした外別紙第二表記載のとおり、昭和二九年一二月二五日、右同様同水道局において各品目欄記載の物件を指名競争入札の方法により購入する旨徳善水道局長の決裁を受け、その頃田原吉郎が擅に作成した同表記載の相見積書計六通を、同表記載の前沢パルプの入札見積書と共に、被告人民部に交付し、次いで被告人民部は右共謀に基き、同局において前同様、指名競争入札の正規適式の手続きを施行しないのに、恰も第二表記載の入札日にこれ等見積書の名義人を指名参加させて競争入札を施行した結果、前沢パルプが同表記載の入札金額により落札を得たものの如く仮装した所要書類を作成の上、これに右各見積書を添え、被告人山岸を経て徳善水道局長に回付し、その旨誤信させ、よつて同表記載の契約日において同局長をして前沢パルプとの間に同表記載の物件につき前沢パルプ入札金額による物品供給契約を締結するに至らしめ、(契約額合計二、八三九、〇〇〇円)以て偽計を用いて公入札の公正を害すべき行為をなし、

第三、被告人山岸友一は、昭和二九年六月一〇頃、東京都中央区京橋三丁目一番地前沢パルプ工業株式会社の営業所において、同社取締役社長前沢慶治から、かねて東京都水道局に対する同社製品の納入に関し、同被告からその職務上好意ある取計らいを得た謝礼及び将来も同様の取計らいを得たい依頼の趣旨のもとに、現金二〇、〇〇〇円を提供されるや、その情を知りながらこれを貰い受け、以て自己の冒頭記載の職務に関して賄賂を収受したものである。

(証拠の標目省略)

(法令の適用)

法律に照らすと、被告永山清治、同山岸友一、同民部岩次郎の各入札妨害の所為は刑法第九六条ノ三第一項罰金等臨時措置法第二条第三条刑法第六〇条に該当するので、被告人永山、同民部についてはいずれも所定刑中罰金刑を選択し、なお右両名の各所為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項に則り法定の合算をした罰金額の範囲内で、被告人永山を罰金一〇〇、〇〇〇円に、同民部を罰金二〇、〇〇〇円に処し、若し右両名が右各罰金を完納できないときは、刑法第一八条第一項に則り金一、〇〇〇円を一日に換算した期間、当該被告人を労役場に留置することゝし、被告人山岸の所為中、収賄の点は同法第一九七条第一項前段に該当し、これと入札妨害の罪とは同法第四五条前段の併合罪の関係にあるので、後者につき所定刑中懲役刑を選択し、同法第四七条第一〇条に従い、重い収賄罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役四月に処し、その情状右懲役刑の執行を猶予するのを相当と認め、同法第二五条第一項により本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。なお被告人山岸が第三の犯行より収受した現金二〇、〇〇〇円は、既に費消されて没収することができないから、昭和三三年法律第一〇七号による改正前の刑法第一九七条ノ四後段によりその価額を追徴し、当審における訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により全部被告人山岸の負担とする。

本件公訴事実中、被告永山に対する別紙第三表記載の入札妨害の事実、及び同山岸、同民部に対する別紙第四表記載の入札妨害の事実については、前記のとおり罪とならないものと認められるので、刑事訴訟法第三三六条に則り、同被告人等に対しては無罪の言渡しをすべきものである。

よつて主文のとおり判決する。

(山本謹 目黒 村上)

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